- 2011-07-30
葉山層群、衣笠の蛇紋岩
2011年7月17日、三浦半島に葉山層群の見学に行ってきました。
この記事では、葉山層群の堆積岩中に点在する蛇紋岩・かんらん岩といった超塩基性岩の紹介をします

↑JR横須賀線の衣笠駅
駅前の商店街はかなり栄えていて便利。かなり魅力的な街でした♪

↑駅から徒歩5分で着く有名な衣笠の蛇紋岩露頭

↑本当に住宅街のどまんなかに忽然とある。

↑そりゃ、蛇紋岩だもの、地すべりも心配ですよね・・・

↑下からみると、なかなかの迫力!反り立つ蛇紋岩の壁!!!(SASUKEの古舘風にw)

↑露頭はゴロゴロとした感じに角礫化(?)している。
一昔前に「蛇紋岩の二次堆積性」というのが流行ったらしいです。
現在では、上部マントルのかんらん岩が沈み込む海洋プレートからのもたらされる水によって蛇紋岩化し、それが蛇紋岩ダイアピルとして密度差によって、軽い蛇紋岩が断層面に沿って上昇してくる際に角礫化したということになっているようですね。
蛇紋岩ダイアピル上昇する間に様々な岩石をトラップしていると考えられます。実際、この近辺ではMOR(中央海嶺)起源と思われる斑レイ岩や玄武岩をトラップしているとか。お隣りの千葉県の嶺岡帯ではMOR起源のものの他に、低温高圧型変成岩の結晶片岩なども見つかっています。
付加体堆積物の中を蛇紋岩ダイアピルが上昇するところは構造侵食(造構性侵食)の場所としても重要になってくるとか何とか…新しい地球科学が生まれる予感のする話を最近聞きましたよ(^^)
まぁ、それはまた別の機会に記事にするかもしれません♪

↑蛇紋岩ダイアピルとして上昇する際なのか、地表付近で風雨にさらされることによる地すべりによってできたのか、ともかく岩石同士がこすれることでこういうつるつるした鏡肌ができるとされてます。

↑鏡肌のアップ

↑黄緑色の蛇紋石が赤茶色に変色している部分がある。これは蛇紋石が変質してできる鉱物、コーリンガ石Coolingiteかもしくはブラグナテリ石Brugnatellite、あるいは両者の混合物によるものであると考えられる。
コーリンガ石Coolingite はMg10Fe2(OH)24(CO3)・2H2Oの組成を持ち、ブラグナテリ石BrugnatelliteMg6Fe(CO3)(OH)13・4H2Oの組成を持っています。どちらも炭酸基を持っていますが、OH基の方が圧倒的に数が多いので水酸化鉱物として扱われています。
ちなみに、ブラグナテリ石FeをMn(共に3価)に置き換えると、デゾーテルス石Desautelsite Mg6Mn2(CO3)(OH)16•4(H2O)になります。
この辺りの細かい鉱物の知識は知らなかったので、はじめは単純に「コーリンガ石」だと思っていましたが、伊藤剛さんのご指摘によりブラクナテリ石の可能性もあることを知りました。ありがとうございました。変質鉱物は難しいですね…

↑コーリンガ石orブラクナテリ石部分のアップ
衣笠の蛇紋岩露頭が有名ですが、葉山層群の中にはこの他にもたくさんの小規模な蛇紋岩体があるようです。そのうちの1つに妙蔵寺付近があります。

↑妙蔵寺の裏の蛇紋岩露頭 お墓の横の露頭でした、おじゃましましたorz

↑岩質は衣笠の露頭とほぼ全く同じでした。露出部分が大変少ないのでわざわざ見に行くようなものじゃないです。宅地化が進んで露頭が減ってしまったそうですね、残念。
いちおう、衣笠の方で少しサンプルを拾ってきました。

↑一見ただの蛇紋岩で、よくあるこのヌメっと感も普通で、拾う必要もなさそうですが…

↑裏を見ると、頑火輝石の斑晶がきらめいていて、ハルツバージャイトHartzburgiteであったことがよくわかる。蛇紋岩化作用が弱かったのだろうか。

↑頑火輝石のアップ 頑火輝石の斑晶の色、母岩の雰囲気の共に水石や鉱物標本で有名な岩手県道又のハルツバージャイトにそっくり。放射状でないところだけが違う。
この後、葉山町に移動し、そこのとある沢で少し見学したところ、蛇紋岩化があまり進んでいないかんらん岩の形跡を残した転石が見つかった。

↑やたらと真ん丸だったのでなんとなく割ってみたら、蛇紋岩化のあまり進んでいないかんらん岩の形跡を残した岩石でした!

↑断面の様子。ほとんどが蛇紋石化して光沢のないぬめっとした緑色になっているが、ところどころ粒状にかんらん石や輝石が残っている。
やはり、葉山層群の蛇紋岩は全体的に蛇紋岩化作用が弱かったのだろうか。
東京湾を挟んだ向かい側の千葉県にある、嶺岡帯の蛇紋岩も、この夏の間にぜひ見に行きたいところである。
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