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  • 2011-12-05

高レベル放射性廃棄物をどうするのか


  福島第一原発事故により、日本は脱原発が決定的になるかとおもいきや、自称保守のトンチンカンなエネルギー安全保障のロジックにより原発推進がにわかに再燃しています。由々しき事態です。
原発のこれ以上の推進を剃る前に、高レベル放射性廃棄物をどうするかを考える必要があります。これは脱原発を志す人達にも共通に課された問題です。既に20世紀より人類がこれまで原子力の火を使ってきた以上、高レベル放射性廃棄物という地球表層環境の循環中では絶対に処理されない物質をどうにかしなければなりません。


日本では、地層処分がもっとも有力視されていますが、これは危険であると言わざるを得ません。ガラス固化された放射性物質は移動がほとんどないという研究が出せれていますが、それでもプレート収束帯で地盤がズタズタである日本の地下にそのような危険物質を埋めるのは賢明なことではありません。
高レベル放射性廃棄物を処分するのに最も良いのは、国際的に協力して南極の岩盤に処分場を作ることです。南極は現状では南極条約により処分場を作ることはできません。これをどうにか改訂する必要があります。南極は安定地塊ですので、日本のように地震や火山の心配は遥かに少ないです。また、南極に処理場を作る利点は、南極に眠る金属鉱床を南極条約改訂に伴って開発できるようにし、そこで得た資金を高レベル放射性廃棄物処分場建設資金にすれば、世界にとって悪い話ではありません。


もし、南極が駄目だとなると、砂漠地帯の国にお金を払って管理を委託することが選択肢としてあげられます。実際、日米が共同でモンゴルの砂漠地帯に処分場建設を計画したという話がありました。はじめこの話を聞いたときは、「なんてひどい事を考えるのだ、自分の国で出たゴミを他国へ押し付けるだなんて!」と思いましたが、しかし、これはアフリカなどで砂漠という不毛地帯を抱える貧しい国が、不毛の荒野をビジネスに変えることができるチャンスなのかもしれないと、改めて考えました。心の荒むような話ですが、21世紀はこうして砂漠という不毛地帯を抱える国家が放射性物質に限らず有害物質の処分場を引き受けることで「荒野ビジネス」を展開する時代になるのかもしれません。
しかし、この荒野ビジネスは安全保障の上では余りほめられたものではありません。やはり、南極の地層処分という選択肢がベストであるように思えます。


繰り返しになりますが、20世紀の文明として原子力を利用してしまった以上、高レベル放射性廃棄物はどこかに処分しなければなりません。どこかでそのリスクを引き受けなければなりません。南極の生物が危ない!、などということを環境保護派の活動家たちは言うかもしれませんが、21世紀には人間の生命・財産と他の生物の生命のリスクを天秤にかけなければ人類社会が存続できなくなるような事例が多々起きるでしょう。その始めの話として、この高レベル放射性廃棄物の問題は、原発から脱却するか推進するか以前に、これから国際的に議論されるべき問題です。

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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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東京工業大学地球惑星科学専攻→東京大学広域科学専攻→東大地殻化学実験施設特任研究員
地球惑星科学のなかでも、固体地球の進化などといったテーマの地球化学・地質学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの研究員です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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