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  • 2010-08-28

フクサイト(Fuchsite)


  フクサイト(フックサイト)fuchsiteは微量のクロムを含むために緑色になった白雲母muscoviteです。


まずは国内外のフクサイトの画像からどうぞ(^0^)/


フクサイトFuchsite2
↑長野県茅野市金鶏鉱山のフクサイト


金鶏鉱山は熱水鉱床の鉱山で、武田信玄が金を採掘するために開発したというものらしいですが、、現代の鉱物界では、金よりも日本式双晶やセリウムフローレンス石というピンク色の珍しいリン酸塩鉱物が出たということで有名です。
私の友人がそれらを求めて採集に出掛けたのですが、収穫はこのようなフクサイトがどっさり取れただけだったとのことです。。。


フクサイトFuchsite1
↑ブラジルミナスジェライスのフクサイト


東京国際ミネラルフェアで購入しました。かなり廉価に販売されていることから相当量がとれるのだと想像されますね。


フクサイトはIMA(国際鉱物学連合)で認められた独立した鉱物種ではなく、あくまで白雲母のクロムを含む変種ということになっています。
そのためか、英名のほうもFuchsite(フクサイト、フックサイト)だけでなく、Mariposite(マリポサイト)というものも用いられているようです。発音はフクサイトだと思っていましたが、Googleの検索結果ではフックサイトが多いようです。
和名のほうも含クロム白雲母、含クローム白雲母、クロム白雲母、クロム雲母、緑雲母、などなど様々。
私が一番気に入っている和名のは一番初めの「含クロム白雲母」ですが、この記事ではタイピングのしやすさ(笑)から「フクサイト」で統一させていただきます。


さて、このフクサイトですが、どのようなところで生成するのでしょうか。


もとの白雲母はKAl2(AlSi3O10)(F,OH)2の化学組成を持ち、カリウム、アルミニウム等に富むことからわかるように、鉄、マグネシウムなどと言った苦鉄質の物質が極めて少ないところでできます。
たとえば、花崗岩ペグマタイトや、珪長質の体積岩が熱水変成された岩石(グライゼンなど)、あるいは、同じく珪長質の堆積岩が広域変成を受けた結晶片岩や千枚岩など……


ところが、クロムという元素は大抵、苦鉄質の物質と挙動を共にします。クロムが周期表の中で鉄に近いところにあることを考えると性質や挙動が似ることにも納得です。クロムの鉱物と言えば、クロム鉄鉱chromiteがほとんど唯一つのクロム鉱石となる鉱物ですが、これはたいていカンラン岩や蛇紋岩などの超苦鉄質岩に伴って生成する正マグマ鉱床という鉱床に存在します。このような鉱床は規模は小さいものの日本国内にも存在します。このような鉱床には灰クロム柘榴石uvarovite、菫泥石Kaemmereriteなどのクロムを含む鉱物も産します。
しかし、このような苦鉄質の環境では逆に白雲母に必要なカリウムやアルミニウムといった珪長質の物質が不足してしまいます。


このため、フクサイトのできる条件は「白雲母ができる条件のある場所でありながら、付近にクロムの供給源となる苦鉄質の岩石がある場所」ということになります。


冒頭の長野県金鶏鉱山の場合、茅野はフォッサマグナにも近く付近には蛇紋岩が数多く露出しています。そのような環境で金鶏鉱山のような熱水鉱床ができると、熱水が地下を動き回る過程で蛇紋岩の中をくぐることになり、そこで熱水にクロムが供給されたと考えられます。
ブラジルの場合も同じように、蛇紋岩や苦鉄質岩の存在する地域で熱水鉱床ができたのでしょうただ、ブラジルは日本の鉱山とは規模がケタ違いに違うようですが。。。


ブラジルについては、こんなレポートを見つけたので参考にどうぞ↓
『ブラジル金属鉱物資源の魅力― 地質構造発達史とメタロジェニーの視点から―』
中山 健 (独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
前編 ・後編


後編のP.4あたりに関連していると思われる事柄が書いてあります。(その他のところも面白そうです。印刷しっぱなしでまだ読んでませんが…orz)


また、埼玉県の長瀞は低温高圧変成岩である結晶片岩が有名で岩畳や虎岩などの観光地にすらなっていますが、たまにフクサイトを含む転石が荒川の河原で拾われることがあります。これは、絹雲母片岩のような白雲母のできる珪長質の岩石の近くに蛇紋岩のような超苦鉄質岩が近接してることから、クロムが供給されて一部の白雲母がフクサイトになったと考えられるでしょう。このようなタイプの結晶片岩に伴うフクサイトはヒスイで有名な新潟県糸魚川周辺などでも見られます。


ところで、フクサイトの微細な粒が石英の中に取り込まれているものをアベンチュリンと呼びジェムストーン等のアクセサリーによくつかわれているようです。主要な産地はインドで、緑色の見た目から「インド翡翠」とも呼ばれるそうです。私は、アベンチュリンは緑色の石に緑色のツブツブがある感じがどうしてもよもぎ餅に見えてしまいます笑 研磨して丸くなっているとなおさらです。。。


手持ちのアベンチュリンがないので画像はその辺のパワーストーンのサイト↓に任せるということで…
http://angelicstones.com/Aventurine.htm


アベンチュリンは、上記のようにして熱水鉱床でできたフクサイトに、後からさらに石英脈が貫入して、石英の中にフクサイトが取り込まれた、ということなのでしょう。


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  • 2010-08-09

紫水晶-アメシストの成因について


  紫水晶と漢字表記するとあまり伝わらないかもしれませんが、アメシストとカタカナでいえば、宝石のことだと多くの方が分かってくれるでしょう。
アメシストは2月の誕生石にもなっている宝石です。今回はこのアメシストについて、自然科学的に見てみましょう。



ところで、何気なくテーマを「アメシスト」と書きましたが、一般には「アメジスト」と呼ばれていることも多いようですね。
「シ」か「ジ」か、どちらが正しいのでしょうか?

英語表記では、amethystであり辞書の発音記号は[θ]となっていますから、「アメシスト」のほうが正しいようですね。
より正しく発音したい方は、下を歯に挟んで「th」の発音をしてください。
この記事では「アメシスト」に統一したいと思いますが、とりあえずはどちらでも通じるのでそこまで厳密になる必要もないでしょう。



◆アメシストはなぜ紫色なのか
アメシストは日本語では紫水晶と言いますが、その名の通り、通常は無色である水晶が、紫色になるとアメシストと呼ばれるのです。



二酸化ケイ素(SiO2)からなる鉱物の石英が、肉眼的に見えるサイズの結晶になったものを特に水晶と呼んでいるのですが、紫になるのは水晶だけでなく、塊の石英である場合もあるため、そのようなときは紫石英などと言われることもあります。



石英や水晶が紫色のアメシストになるのは、二酸化ケイ素に含まれるケイ素のごく一部が2価の鉄イオン(Fe2+)に置き換わっているからだと言われています。



要するに、石英に不純物として鉄が含まれると紫色のアメシストになるというわけです。



普通は無色の鉱物に色がつくときにはこのような微量な不純物によることが多いものです。例えば、宝石として有名なルビーとサファイアはどちらもコランダムという酸化アルミニウムの鉱物に



不純物として、アルミニウムの代わりにルビーにはクロムが、サファイアには鉄やチタンが1%ほど入ったためあのような色がつくのです。



もう1つ例をあげると、アクアマリンとエメラルドも同じベリル(緑柱石)という鉱物に不純物が入ったものです。
緑柱石は不純物によっては、赤やピンク、黄色などの色になることもあります。



石英についても、紫以外にも黒やピンクになるものがあります。
黒はアルミニウムによるもので、色が薄いと煙水晶、濃いと黒水晶と呼ばれます。
ピンクについては紅水晶と呼ばれていますが、発色の原因は諸説あり未だ分かっていないようです。



『不純物として混入している微量のチタン、鉄、マンガンに由来するとされる。 近年のX線元素分析では、この色は光学顕微鏡で観察可能なレベルの デュモルチエライトの繊維によるという結果も出ている。しかしながら、デュモルチエライトは単独の結晶としては滅多に産出しないもので、 従って呈色はリン酸塩やアルミニウムによると考える意見もある』



以上、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%85%E6%B0%B4%E6%99%B6より



このように、不純物が入ると色がつくのは、不純物によって結晶構造の一部が乱れ、透過する光のうち特定の波長が吸収されてしまうためです。



さて、アメシストに話を戻しましょう。繰り返しになりますが、アメシストが紫色なのは不純物として2価の鉄イオンによるものですが、どのような時に鉄が不純物として水晶に入ってくるのでしょうか?



◆アメシストの産状
販売されている多くのアメシストが緑色っぽい岩からアメシストがザクザクしています(個人的にはスイカと呼んでます)。



これはブラジル産のアメシストで、ブラジルは世界で最もたくさんアメシストを産出しています。



この「スイカタイプ」のアメシスト標本は大きな晶洞を割って作られたものです。



割る前の晶洞が大きな置き石のような飾りになって数十万円くらいで売られているのを見たことがある人もいるでしょう。



PAP_0064_20100809170507.jpg
↑人の身長くらいあるアメシスト晶洞 コムロミネラルズ標本店にて



このようなブラジルの晶洞は玄武岩の中のパイプ状の空洞にできたものです。スイカの皮の部分に当たる緑色の石は玄武岩なのです。



玄武岩は火山岩のうち、鉄やマグネシウムに富む有色鉱物が多い塩基性岩と言われる部類に入る岩石です。
玄武岩質の溶岩は、溶岩の中でも安山岩質流紋岩質のものと比べると、高温で粘り気の低いサラサラで流れやすい性質を持っています。



ハワイの火山で溶岩の流れる様子を動画で見たことのある人は想像しやすいかもしれません。



そのような高温、サラサラの溶岩が地表を流れると外側は素早く冷やされて固まりますが、中のほうはまだまだアツアツでサラサラなので、どんどん先へと流れて行ってしまいます。



すると、固まった外側の溶岩によりパイプ状の空洞が残されます。このような空洞は溶岩洞穴と呼ばれることもあり、たとえば富士山のふもとでは多くの溶岩洞穴が観光スポットにもなっています。



溶岩洞穴には、上記のような仕組み以外にも溶岩に含まれていたガス(主に水蒸気)がたまって空洞になるというパターンもあります。



ブラジルのアメシストは、そのようにしてできた玄武岩の空洞の中にシリカ(二酸化ケイ素)を含んだ熱水が浸入して晶出したものなのです。



玄武岩は鉄やマグネシウムに富む岩石ですから、おのずと浸入してきた熱水の鉄分も多くなるでしょう。このようにして、水晶に鉄分が混ざりアメシストはできるのです。



紫水晶アメシスト
↑ブラジルのアメシスト 自分のコレクションより。
 右にあるオレンジ色菱形の結晶は方解石
 このタイプのアメシスト標本にはこのような方解石が付いてることも少なくない。



ブラジル以外でも、アメシストは玄武岩や安山岩などの鉄分に富んだ岩石の隙間にできるシリカ脈に多く見つかります。
日本国内でも宮城県雨塚山や、栃木県足尾などがアメシストの有名産地ですが、そのような条件に当てはまっていると言えるでしょう。



ただ、上記の産地以外でも日本国内のアメシストは玄武岩よりも鉄に乏しい安山岩によるシリカ脈であるため、産出する品は色が薄めになっているようです。 (それはそれでほんのりとした魅力のある鉱物標本です。)



もちろん、鉄はありふれた元素なので、必ずしもそのような産状ではなくてもたとえばペグマタイトのようなところでもアメシストが出たリスつことはあります。



しかし、宝石として研磨できるような綺麗な紫になるためにはそれなりに鉄分を含んでいる必要があるので、やはりブラジルのような玄武岩の隙間がベストということになるでしょう。

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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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(館長のブログ)

東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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