planetscope blog

  • 2011-02-28

2-2 千葉石とシリカ鉱物


  本館planetscopeで千葉石の特集ページ作りました!

http://teruteru.bakufu.org/Chibaseki.html


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◆シリカ鉱物たち
今回発見された千葉石はシリカ鉱物ですが、通常、シリカ鉱物の代表といえばなんといっても石英です。
なんとなく「シリカ鉱物」と呼んでしまいますが、天然に産する「シリカ」は以下のように分けることができます。

1)二酸化ケイ素SiO2のみを成分とする結晶質のもの
・α石英(低温石英、α-Quartz)
・β石英(高温石英、β-Quartz)
・鱗珪石(トリディマイト、Tridymite)
・方珪石(クリストバル石、Cristobalite)
・モガン石(Moganite)
・(Lutecite)=モガン石?
・(Lutecine)
・コース石(Coesite)
・スティショフ石(Stishovite)
・Keatite

2)二酸化ケイ素をSiO2を主成分とし非晶質なもの
・蛋白石(オパール、Opal)
・"火山ガラス"(鉱物ではない。黒曜岩など、Silica grass)

3)シリカをホストとする包接化合物
・黒珪石(メラノフロジャイト、Melanophlogite、Ⅰ型)
・千葉石(Chibaite、Ⅱ型)
・「第2の千葉石」(H型)


地表でもっとも安定なのはα石英であり、当然最も普通に見られます。ただし、今まで普通に石英だと思っていたものが実はモガン石Monganiteなどの他の鉱物であることが最近明らかになったということもあります。それについても大変面白く興味深い話ですが、本題の千葉石からそれてしまうので気になる方はこちらのサイト『鉱物箱』のページを参考にどうぞ

千葉石や、2-1で登場した黒珪石(メラノフロジャイト)、そして今回発見され未発表の「第2の千葉石」などのシリカ鉱物も地表では不安定なため、石英に変化していきます。千葉石の場合、千葉石である間は透明ですが、石英になったもの(千葉石仮像の石英)は白濁します。1-1で紹介したように、はじめて発見されたのはそういった千葉石の仮像の石英でした。
黒珪石もやはり地表の通常の環境では石英のほうが安定なので、仮像の石英となって見つかることが多いといいます。

以下ではシリカ包接化合物の鉱物、特に黒珪石と千葉石について、詳しく比較していきます。(シリカの包接化合物の結晶構造については2-1 千葉石と結晶構造をご覧ください)

メラノフロジャイト(黒珪石)
↑画像6 黒珪石(メラノフロジャイトMelanophlogite)
 Loc.Fortullino, Rosignano Marittimo, Livorno Province, Tuscany, Italy
 Mindat.orgの記事より

千葉石
↑画像7 千葉石の結晶 (産経新聞のサイトより 物質・材料研究機構提供)


◆シリカ包接化合物による鉱物
黒珪石(メラノフロジャイト、Melanophlogite)は、千葉石よりもはるかに古く19世紀にはその存在が知られていました。
化学組成は46SiO2・2(CH4,N2)・6(N2,CO2)、正方晶系です。和名は明治時代の鉱物学者がつけたもので、その由来は火にかけるとゲストとして含まれてる有機物が黒変することから来ています。
千葉石と同じく包接化合物ですが、包接化合物であると知られたのは発見からだいぶたった1965年であったといいます。千葉石との違いは、千葉石はメタン、エタンなどの天然ガス成分しかゲストになっていませんが、黒珪石はメタンの他に二酸化硫黄、二酸化炭素、窒素ガスなども含んでいます。成分は産地によって変動すると言われています。
ところで、千葉石も黒珪石と同じくメタンなどの有機物の包接化合物ですから、(もったいなくてそんなことできないですが笑)火で炙ってみたら黒く変色するかもしれませんね。

今回の千葉石の発見にともなって、「第2の千葉石」、黒珪石も同じ標本から見出されています。しかし、黒珪石は千葉石と同じような付加体の冷湧水による環境(後の3-1 千葉石の産地と生成環境で詳しく書きます)からだけでなく、というよりも今まで主に発見されてきていたのは千葉石と異なります。
まず画像6の標本の産地であるイタリアのシシリー島では自然硫黄や方解石の結晶の上に低温低圧下で生成さたものです。シシリー島の自然硫黄はきれいな色と結晶で有名ですが、ここのものは日本各地の火山噴気口で見られる自然硫黄とは異なり、石灰岩の地層に酸性の硫黄成分を含むガスが侵入することによってできたものです。その末期生成物として黒珪石があるようです。
また、アメリカのカリフォルニア州ではドロマイト化作用を受けてドーソン石などを生じている結晶片岩の隙間に1mm程度の黒珪石の立方体結晶が生成しているといいます。日本では群馬県鈩沢が同じような産地ですがまだ黒珪石は見つかってないそうです。
さらに、鉱物同志会の会誌『水晶 11号水晶特集号』(1998年3月)のP.32『新潟県黒岩産の黒珪石仮晶と思われる石英』(堀秀道、徳本明子)によると、火山岩の隙間に生成した沸石の産地である新潟県黒岩にて、立方体結晶をした石英が見つかっており、これが黒珪石の仮像ではないかと書いてありました。


このように、黒珪石と千葉石は大変関連性の高い鉱物ですが全く違う産状で産しています。黒珪石の産状が色いろあるように、今後、千葉石の新たな産状の産地が現れるかもしれません!


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千葉石特集のトップページに戻る
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~参考~
・『The Quartz Page』 http://www.quartzpage.de/gen_mod.html
・Wikipedia英語版よりMelanophlogiteの記事
・サイト『鉱物箱』より http://kobutubako.web.fc2.com/Melanophlogite.htm
・鉱物同志会の会誌『水晶 11号水晶特集号』(1998年3月)のP.32『新潟県黒岩産の黒珪石仮晶と思われる石英』(堀秀道、徳元明子)

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  • 2011-02-28

2-1 千葉石と結晶構造


  本館planetscopeで千葉石の特集ページ作りました!

http://teruteru.bakufu.org/Chibaseki.html


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◆千葉石Chibaiteの基本情報 
すでにMindat.orgに千葉石のページが作られていました。
http://www.mindat.org/min-39335.html

・原産地Type Locality
  千葉県南房総市荒川
  Arakawa, Minamiboso city, Chiba prefecture, Kanto region, Honshu Island, Japan

・化学組成 - SiO2・n(CH4,C2H6,C3H8,C4H10) (n = 3/17 (max))

・結晶系 - 等軸晶系

・結晶の外見 - 
 千葉石結晶の理想型
↑画像3 結晶の理想型(左b)と一般に観察される形態(右c)の模式図
cはbの点線で囲まれた部分の双晶になっており、六角板状に見える。
(高田雅介氏作成)、日本地質学会のサイトより引用


◆クラスレート(包接化合物)
千葉石の化学的な特徴はなんといっても、シリカの中にメタンなどの有機物分子を含んでいることです。シリカによる結晶の中にメタン、エタン、プロパン、ブタンが取り込まれていて、その構造は新しい資源の可能性が注目されるメタンハイドレートと同じ構造で、メタンハイドレートの水分子を珪素と酸素で置き換えたような構造になっています。
千葉石の結晶構造
↑画像4 千葉石の結晶構造とメタンハイドレートの比較 産総研のサイトより


千葉石やメタンハイドレートのように、一方のある化学種(ホスト)によって作られる分子レベルの空間の中に、その空間に形状と寸法が適合することを第一要件として、他方の化学種(ゲスト)を取り込む(包接する)ことによって生じる化合物のことを包接化合物といいます。包接化合物は抱接体、Clathrate(クラスレート)、Inclusion compound(インクリュージョン コンパウンド)などとも呼ばれます。

http://maildbs.c.u-tokyo.ac.jp/~nisikori/clathrate.html
クラスレート(包接化合物)
↑画像5 包接化合物 
 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 錦織研究室のサイトより

錦織研究室のサイトによると、
・ホストとゲストの間には、通常の化学結合(共有結合)はありません。しかし、水素結合や静電相互作用などは存在する場合があります。…
・ホストには、ゲストが入っていなくてもホスト単独で包接体ホストとしての構造を保っているものと、ゲストと共存して初めて包接体ホストとなるものがあります。 包接体の形成は、ホストとゲストが共存すると自発的に進みます。普通は、ホストとゲストを直接接触させたり、溶液中で混ぜたり再結晶したりすることで行い、一般の化学合成で用いられるような激しい条件は不要です。また、多くの場合、包接体を分解すると中身のゲストを回収することができます。

とあります。下の画像も錦織研究室から。
包接化合物2
↑画像5 錦織研究室のページから引用。

メタンハイドレートの場合、メタンが抜けると水分子によるホストの構造は崩壊してしまいます。千葉石の場合も、白濁した石英に変化してしまい千葉石の仮像になったものがいくつも見つかっているところを見ると、ゲストの有機物が抜けてしまうと構造を維持できないのかもしれません。もちろん、メタンなどの分子が抜けてしまってもしばらくシリカによるホスト構造は維持できるが「長時間」かけてより安定な石英に変化していく、という可能性もありますが。
また、条件さえ合えばホストとゲストによる抱接体形成の反応は自発的に進むと、いうのも気になるところです。地表環境では千葉石の多くはより安定な石英に崩壊してしまい、千葉石はレアな鉱物になるのかもしれませんが、千葉石の生成環境した環境とされる海底の付加体(『3-1千葉石の産地と生成環境』で詳しく書きます)ではメタンなどとシリカがあれば用意に千葉石が形成されるということなのでしょうか?海底にはたくさんの千葉石が眠っているのかもしれません!そのうち、海底調査で千葉石の巨晶なんてのが見つかったり…なんて妄想してしまいます(笑)

◆千葉石の結晶構造
画像4の下半分を見ると、Ⅰ型、Ⅱ型、H型という結晶構造の図があります。これは抱接体のホストの形が3通りあるということを表しています。

水がホスト、メタンがゲストとなっている包接化合物:メタンハイドレートの場合、Ⅰ型の構造を取ります。メタンハイドレートは海底で産出しますが、そこには水がゲストとしてメタン以外のエタンやプロパンなどのガス分子を取り込んでいる包接化合物もあり、それらは総称して天然ガスハイドレートと呼ばれています。天然ガスハイドレートでは、すでに天然のものの中からこの3通り全てが発見されていました。この構造の違いは、ゲストになる有機物の分子の大きさの違いから現れるものです。ゲストの「隙間」の直径は1 nm程度で、大きなガス分子は大きな「隙間」にしか入ることができないため、このようなことが起こるのです。

シリカがホスト、メタンなどの有機物がゲストになっている鉱物では、Ⅰ型のメタンハイドレートと同じ型のものが、以外にも古く、19世紀にメラノフロジャイト(Melanophlogite、黒珪石)として発見、記載されていました。(詳しくはこのあと2-2千葉石とシリカ鉱物にて)
今回発見された千葉石はⅡ型の構造を取るものです。
さらに、千葉石を含む標本から、すでにH型の結晶構造を取る鉱物が発見されているといいます。すなわち、近々「第2の千葉石」が発表されるということになるでしょう!れらの発見により、天然ガスハイドレートと同様、シリカ鉱物でも、3種類の構造が自然界に存在することを世界で初めて確認されたことになります!

石なし県・千葉で一気に2種類も新鉱物が発見されるとは!しかも、包接化合物という珍しい鉱物が!

「第2の千葉石」の名前は何になるのでしょうかね?無難に「房総石Bousouite」あたりなのかな?


~参考~
・Mindat.org 千葉石の記事

・産業総合研究所 プレスリリース『天然ガスを含む新鉱物『千葉石』-天然ガスハイドレートと相似な構造を有するシリカクラスレート鉱物-』
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110216/pr20110216.html

・日本地質学会『新鉱物「千葉石」の発見』、高橋直樹(千葉県立中央博物館)
http://www.geosociety.jp/faq/content0281.html

・東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の相関基礎科学系錦織研究室のサイト

・Wikipediaより『メタンハイドレート』の記事



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まだ千葉石特集は続きます!

続きはこちら↓へどうぞ!
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Author:てるてる
沢田 輝
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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