planetscope blog

  • 2011-05-30

地質学で考える原発メルトダウン


  福島第一原発の「原発震災」は、もはや日常の一部となりつつあります。震災発生から数日以内には炉内の燃料棒が溶け落ちるメルトダウンしていたとか、圧力容器、格納容器などの「五重の壁」などというのもあっさりともろくも崩れ落ちているとか、次々と残念すぎる事実が明らかになりつつあります。

TVニュースやネット上では、政府公式発表のみならず、国内外の様々な原子力専門家が「メルトダウンまではしていない」とか「圧力容器、格納容器の遮蔽は保たれているはず」などという発言が数多くあり、私自身恥ずかしながらそれらが合理的な判断であると考えてしまっていました。

そんな中ではありますが、先日、幕張メッセで行われていた日本地球惑星科学連合大会JpGUにおいて、東京工業大学の丸山茂徳先生が「メルトダウン事故はもはや原子炉内物理学や原子炉工学の出番ではなく地質学の知識を活用すべきだ」という斬新な考えを述べてました。
自分は丸山先生の原発事故対応の話を、JpGUにおける「真の大陸成長」の口頭発表のところと、その3日後に大学の授業での2回も聞くことになりましたが、大変興味深い話でした。

丸山先生の示していた「原発事故対応」をまとめた図をペイントで作ったので載せます。

原発震災

以下、丸山先生の主張をまとめました。私の編集により若干誤差が入っている可能性もありますがご了承ください。 

◆やるべきこと
・汚染の停止
・爆発の阻止
・放射性物質の除去


◆具体策
・原発の建屋を屋根で覆う。
・地下をコンクリート壁で遮蔽し、雨水や地下水の汚染、さらには海洋の汚染を防ぐ。
・建屋内にはゼオライトや軽石、炭などの吸着性のある物質で放射性物質を吸着し、
 さらに水素爆発を阻止するため、ヘドロや炭の投入で建屋内の酸素を除去し嫌気環境を保つ。
・内圧が高くなりすぎないために、多重フィルターを装備した煙突からの排気を行う。
・建屋内はなるべくドライな環境を保つべき。
 水蒸気爆発が起こらないようにするため、また、汚染水の発生を防ぐため。
 現在のように注水し続けるのは間違いである。
・煙突の排気口で放射線量のモニタリングを行う。

◆メルトダウンした核燃料はどうなる?
・メルトダウン事故⇒ウラン、ジルコニウム、プルトニウムの酸化物メルト(溶融物)を扱わなければならない。
         ⇒マグマを扱う地質学の知識を用いるべきである。

・ウラン、ジルコニウム、プルトニウムの酸化物メルト(溶融物)は約2000度と極めて高温である。
 これらが原子炉圧力容器、格納容器を溶かして、さらに下のコンクリート基板を溶かし、
 地盤を構成する砂層に達する可能性は高い。

・鉄は高温でないと溶けないが、コンクリートは400度程度で溶けてしまう。コンクリートは炭酸塩からなるので、これが溶けるとそれはカーボナタイトマグマに相当する。

・核燃料メルトがコンクリートを突き破ると、地盤の堆積物である珪酸塩の砂を溶かし、珪酸塩マグマを発生させる。

・酸化ウランなどを成分としていた核燃料メルトは珪酸塩マグマを発生させつつ、徐々にそれらと混合し薄まっていく。そのため、再臨界したとしても珪酸塩マグマで薄まってそのうち停止するため、いわゆる「チャイナシンドローム」のようにどこまでも溶けていくということはない。

・「この核燃料メルト+珪酸塩のマグマが堆積岩中の水分と接触してマグマ水蒸気爆発を起こす心配はないのか?」と私は質問したが、丸山先生はその心配はないという。

火山でマグマと地下水が反応して水蒸気爆発が起こるのは、マグマからの盛んな蒸気に含まれるシリカ成分が火山岩の隙間に膠着することによって、蒸気が密閉されてしまうからである。原発メルトダウン事故の場合は、間隙率の高い砂層などの堆積岩が四方八方に広がっている、その一部が蒸気からのシリカによる膠着で塞がっても左右と下方向にもまだフリーな空間がいくらでもある、そもそもマグマが上から落ちてくるので上方向に蒸気の逃げ道がある、などの理由から水蒸気爆発は起らない。周辺の砂層と核燃料+珪酸塩メルトの反応により、接触変成作用、交代作用が起こり、そこでは水蒸気爆発のような急激な減少ではなく、変成作用という穏やかな脱水作用が行われる。


要するに、メルトダウンして核燃料が下に溶けていくこと自体は問題ではない、五重の壁などという考えにとりつかれているのはおかしい、ということでした。全く、丸山先生の斬新な発想にはいつも驚かされます。工学屋さんのように、自らの設計した環境でどうやって制御していくかではなく、常に思いもよらぬ環境を相手にしている地学屋さんらしい発想だと感じました。

今回の福島第一原発のメルトダウンでは核燃料メルトが本当にコンクリートを突き破っているかどうかはわかりませんが、今後の原発事故の対応のためにも、こういったシビアアクシデントに対する考察を行っていく必要があります。今までこういったことをしなかったのがすべての過ちの始まりなのです。今、世界は脱原発の機運が高まっているとはいえ、すぐに脱原発が達成されるとは限りません。そうこうしているうちにまた事故が起きてしまう可能性もないとは言えません。(特に浜岡なんかは…)


丸山先生は「地質学者にも社会的責任がある」とおっしゃっていましたが、確かに、自分のような下っ端の下っ端である学生から、プロの研究者の多くまで、こういうことを考えるという事自体放棄していたのではないかと思います。もちろん、現実的にはこういう発言をパブリックにできるのは丸山先生位のお方だから、というのもあるかもしれませんが、すこし自分も反省しなきゃな、と思っていたりもします。


 
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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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