planetscope blog

  • 2011-10-31

21世紀の持続可能な発展の仕組としての、関税


  先日のブログ記事『TPPはもはや自由貿易以前の問題』では、「明治時代の日本人が関税自主権を回復するのにどれだけの血と汗と涙を流したかを、もう一度思い起こすべき」と書いたが、幕末の日本で問題になった関税と現代においてTPPなどで問題になっている関税とでは少し性質が異なる。


以下、Wikipediaの「関税自主権」の項から引用↓
~引用開始~
幕末の安政条約によって日本は関税自主権のないままの開国を迎えることになるが、当初は輸出税は一律5%、輸入税は1類(金銀、居留民の生活必需品)は無税・2類(船舶用品・食料・石炭)は5%・3類(酒類)20%・4類(その他)20%であり、神奈川開港の5年後には日本側から税率引上の協議を要求できる、関税賦課は従価税であるという日本側も決して不利益とは言えないものであった(従量税で引上協議の要求できない天津条約を結ばされた清朝中国に比べればの話であるが)。ところが、改税約書によって主要な輸入品89品目と輸出品53品目を当時の従価を基にした5%の従量税とし、無税対象を18品目・その他は一律従価5%に改められた。従価税であれば、価格が上昇すれば関税収入もそれに比例して上昇するが、従量税であれば価格に関わり無く量に応じた関税を払えばよく、幕末の混乱期のインフレによって事実上の関税免除に近い状態になってしまったのである。
そのため明治政府は、輸出関税自主権回復と領事裁判権撤廃に血道を上げることになる。欧米列強との間に初めて関税自主権を回復できたのは、日露戦争後に1907年に締結された日露新通商航海条約であった。その後、1911年にアメリカを始めとする他の列強は日本と平等条約(日米通商航海条約など)を締結し、完全な回復は現実となった。
~引用終了~


この記事はおそらくTPPを意識して輸入関税自主権の影響は幕末~明治時代においてもそれほど大きくなかったということが言いたくて編集されているかのように感じる。
関税は、輸入品にかかるものがほとんどであるし、現在TPPなどで問題になっているのもそれである。しかし、輸出品にかける関税もある。幕末に問題になったのは後者のほうで、日本が幕末の混乱や金銀の兌換率の違いなどで経済が混乱した上に、海外から商品を買い叩かれ大変な品薄になったという。
輸出、輸入のどちらかにかかわらず、その時々の経済状況に応じて、外部との物のやり取りをコントロールするのは国家や地域の基本権利であり、世界の安定には必要不可欠である。これを奪って経済成長と称して儲けを上げたり消費を拡充すると、世界のどこかの誰かが必ず不幸になる。関税をゼロにする自由貿易は、ある条件下では双方の国にとって有利に働くこともあるが、それは一般則ではない。むしろ、現在の状況では当てはまらず自由貿易推進による関税撤廃は日本のみならず世界の劣化と格差の根源でしかない。それぞれの国が自然や社会や文化の変動に基づく経済状況の変化に対応して国を守るためのツールとして、関税の税率を変化させる権利を持っているべきである。


また、特に農業分野について言えば、自由貿易・関税撤廃によって農作物の生産地と消費地が大きく隔離することは世界の砂漠化を促進することにつながりかねない。物質の移動を国家ないし地域単位でコントロールするのは自然環境の面からも必要な対策である。
これは現在の状況から言えば、どちらかと言えば日本ではなくアメリカの問題である。生態系システムにおいて、動物が食べることで消費した植物は食物連鎖をめぐり最終的に排泄やその動物の遺骸という形の廃物として土壌に帰り、植物の肥料になる。農業でもこの繰り返しは基本的に同様に行われるべきである。
日本のような生態系が豊かな湿潤温帯地域ではこのサイクルを利用する中で農業を営むことは比較的たやすい。しかし、アメリカのような半砂漠地帯で科学技術の力を用いた大規模農法では生態系のサイクルなどあるわけもなく、化石資源である地下水を一方的に消費し、土地の肥料を不可逆的に吸収し、それを補うために人工肥料などに石油資源が大量に投入されていく。このような土地でこのような農業を営み、それを安い食品で比較優位があるとして世界に売り込むことは、紛れも無く自然からの搾取による外部不経済であり、その事によってもたらされる経済成長は持続可能な発展とは対局に位置するものである。
アメリカは自国の末永い繁栄と国土の保全を本当に考えるならば、そのような大規模農法を規制するべきである。日本も、世界的にも類稀な恵まれた場所にあり、瑞穂の国として2000年近い歴史がある国として、そのような搾取的な農法による安い作物を両手を上げて喜んで迎え入れて良いわけがない。


21世紀の国際社会が持続可能な発展をするにあたって、関税は今後ますます重要なツールになる。それぞれの国が、自らの経済状況のみならず、自然環境、文化、歴史などを踏まえて、量的な成長ではなく質的な発展が可能な社会を考えることこそが求められている。
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  • 2011-10-29

TPPはもはや自由貿易以前の問題


  昨日のとくダネ!での中野剛志さんに関する記事に引き続き、TPPの話題でブログ記事を投稿させていただいてます。


TPPはもはや自由貿易の問題ではなくなっているようです。私は自由貿易そのものに反対なので、それと絡めてTPPを論じてきましたが、TPPは利権をめぐる日本国とアメリカ合衆国の国家主権の削り合いの戦いです。「アメリカは日本のTPP参加に期待している」と言っていて、なおかつ輸出倍増戦略を掲げている。これだけで、日本がカモられる事が十分察しがつくはずです。


日本でTPPに賛成しているのは、目先の数字や利益を追い掛け回してばかりの「経済学者」と大企業の経済人たち。政治家はそれに乗せられ、党利党略の為、政局のため、アメリカのご都合のため、この国家主権に関わる一大事を国民への説明も議論も無しに推し進めようとしているのです。


TPP:政府のTPPに関する内部文書(要旨)-毎日新聞


野田総理はリーダーシップという言葉に魅せられて、国民も反対するような目先の無理難題を攻略すれば支持率が上がると思っているのでしょうか。『坂の上の雲』が愛読書だと言っていたそうですが、明治時代の日本人が関税自主権を回復するのにどれだけの血と汗と涙を流したかを、もう一度思い起こすべきです。


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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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(館長のブログ)

東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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