planetscope blog

  • 2017-01-27

さよなら足立日記 エピソード1 梅島の珍来


  〜前回までのあらすじ〜
学振に採用されたので、晴れて東大駒場近くに引っ越すことになった。
残り2週間、足立に別れを惜しむべく、これまで愛してきた名店の料理を食べ歩くのであったが……

それは真夜中の12時を回った頃だった。
眠りから覚めたら東武スカイツリーライン梅島駅の看板が目に入る。
不覚だった。その日は大学帰りに渋谷で軽く飲んでいたのだが、まさか電車で眠ってしまうとは。

ここは足立区。

そして足立区を南北に貫く東武スカイツリーライン、うっかり寝てしまうと財布やらスマホやらが抜き取られているのは当然のことなのだ。

僕は慌ててカバンとポケットを確認して、仏の加護があってか何も奪われてない事を確認した。
しかしまだ僕の動揺は収まらない。
なぜなら五反野が最寄り駅なのに梅島にいるということは、紛れもなく乗り過ごしてしまった事を意味するからだ。

このスクランブル発進のような目覚めの時間、電車のドアが開いて閉じるまでのわずか15秒。ともかく僕は寒風吹き付ける梅島駅のプラットフォームに降り立った。

既に取るべき行動は決まっていた。梅島駅にいるのだ。珍来梅島店に行くしかない。

珍来とは足立区を中心に、東葛地区と呼ばれる東京北東部とそれに接続する千葉茨城の一部地域に店舗を持つラーメン餃子中華料理チェーンである。三郷の工場で作った麺と餃子の皮を共有している以外は、各店舗のシェフの腕前で味に雲泥の差が出る、それが珍来だ。

なかでも珍来梅島店は名店と名高い。味に安定感がある。梅島駅から歩いて1分、赤い暖簾をはねのけて店に飛び込んだ。

「ぃぃらっしゃぃますぇえぇぇ〜」

若い店員のリズミカルで軽快な声が響く。
伴に聞こえる中華鍋とお玉の擦れるリズムが織り成すサウンドスケープは、今自分が珍来に来たということを知らしめる

赤く脂ぎった床を数歩だけ歩き、茶色いカウンターテーブルに座る。夜12時半というのに奥のテーブル席はほぼ満席だ。
サワーなどを飲みながら騒ぐ中小企業社員と思われる一行、
その横ではジャージ姿でくすんだ金色の髪をした中年夫婦が黙々とチャーハンを口に運び続け、
さらにその横にはニッカポッカ姿で餃子とメンマを突きながら焼酎を飲む白髪で腹のぷっくり出たオッサン、
さらにさらにその横にはクルクルの茶髪にゲジゲジのつけまつげでヒョウ柄のミニスカート姿の若い女2人組が
「まじで好きな食べ物珍來って答えるし〜」
「めっちゃわかるぅ〜」
などと微笑ましい会話を繰り広げている。
いずれも足立の珍来を特徴付ける人々だ。

危険の多い足立区だが、珍来だけは聖域なのだ。
ヒトは生まれて初めて食べたラーメンを世界の基準と認識し、その後のあらゆるラーメンの良し悪しを測る習性があるということは広く知られているが、足立で生まれた者の多くにとってその基準となるラーメンはこの珍來なのである。
旨い飯屋などと形容できる程度の存在ではないのだ。
従って、いくら深夜の足立とは言え、珍來店内では殴り合いや抗争が起きるようなことは少ないのである。

さて、とりあえずメニューを開く。
「万物に感謝。皆様に支えられて85年」という言葉が暖かく迎えてくれる。
珍来のメニュー

まもなく水とゆで玉子を運んできた店員に「タンメンお願いします」と伝える。
店舗にも依るが、珍来では殻付きのゆで玉子がサービスとして出てくるのだ。
料理を待つ間、ゆで玉子の殻を剥く作業に従事することで、さらに喧騒の外と珍来の内を隔てる精神的効果が高まってくる。

剝いたゆで玉子はラーメンに投下しても良いし、卓上においてある青い蓋の食卓塩を振り掛けてそのまま食べても良い。今回はそのまま食べることにした。中華鍋の奏でる軽快な音楽をBGMにしながら、ゆで玉子を食べてしばらく、タンメンの盛られたラーメンどんぶりがカウンターの上に並ぶ。すばやく店員が駆け寄り、白いレンゲを脇に添え、僕の席へと運ぶ。

「はぃタンメンぉまちどぉさまぇす」
珍来のタンメン

軽やかに炒められた野菜と卵入り中華麺、そして少し濃い目の塩味のスープについては敢えて語ることはしない。写真だけ載せておこう。言葉で言い表すべきものでもない。この味は足立に行って自分で確かめてほしい。

気がつくと目の前には僅かなスープの残るどんぶりだけがあった。くすんだ緑色のボトルに入れられた氷水を自分のグラスに注ぎ、余韻を楽しむことしばし。

会計を済まして店を出ることとする。「ぁりがとぅござぇぁまぁすぅ」。聞き慣れた軽快な挨拶で送り出してくれる珍来の店員。こちらも「ごちそぉさんです」と返して寒い店外へと出る。

腹も満たされた。これから五反野に帰るには国道4号を超えて歩いてゆかねばならない。
寒い上に危険も多いが、腹は満たされた。
オリオン座の輝く寒空の元、複数の改造バイクの爆走するエンジン音が鳴り響く中であっても、足取りは軽かった。

※この物語はフィクションであり、事実と多少異なる点がありますが、そのあたりは自分で足立区や珍来梅島店に行って経験することで確認してください。

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  • 2017-01-23

出来合いcssで研究用サイト作ったらすごく意識高そうな感じになってしまった件


  論文2編目も通ったし、自分の研究用のサイトでも作ろうかなと思って作ってみたら、想像以上に意識高そうな感じになってしまった。

 Hikaru Sawada's personal page 沢田輝の個人ページ

実ははじめて出来合いのcssフリー素材を使ってみた。こちらのvolcanoってやつです
部分的には色々と改良してみたけどね。
ちゃんとレスポンシブ対応してます。
グーグルのモバイルフレンドリーテストも一発合格。
jsでぬるぬる動くし楽しい。

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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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(館長のブログ)

東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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