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  • 2010-09-24

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite


  氷晶石CryoliteはNa3AlF6という化学組成を持ち、ガガーリン石Gagarinite-(Y)はNaCaYF6であり、共にハロゲン化鉱物です。



それでは、まずは標本の画像から見ていきましょう。
この標本は氷晶石としてK標本店で購入したのですが、標本店の社長さんに見てもらったところガガーリン石も付いているということが分かりました。
産地はロシアのシベリア地方です(Loc. River Katugin,Siberia,Russia)

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite
↑標本の表側 くすんだ茶色がかった灰色の母岩部分は氷晶石
 左側に見える黒色板状の鉱物は黒雲母Biotite
 その下にある小さい黒い鉱物はよく見ると金属光沢があり方鉛鉱Galena
 そして、表面に被膜のようにはりついている黄土色の鉱物がガガーリン石です。

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite
↑標本の裏側 黒雲母のかけらやうっすらとガガーリン石がある以外はほとんどすべて氷晶石 

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite
↑ガガーリン石部分のアップ画像

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite

↑ガガーリン石の粒になっているところ 色が濃くなっている

氷晶石Cryoliteとガガーリン石Gagarinite
↑はじめの画像の右側部分のアップ ややピンクがかった白色の被膜もガガーリン石



◆氷晶石について
Na3AlF6の組成は化学的にはヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムという物質で、高校などではアルミニウム精錬の過程で融剤として使われていることを習います。
この標本はロシア産ですが、最初に発見されたのは1799年に西グリーンランドのイビクドゥトという場所で、工業的に採掘するほどまとまって産し、また工業利用できるほど純度が高いのもグリーンランドのみでした。純度が高いため、グリーンランド産の氷晶石はほとんど白一色の塊です。
Wikipediaに載っている画像もそのようなタイプのグリーンランド産の標本です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B7%E6%99%B6%E7%9F%B3

この氷晶石の輸出により、グリーンランドは莫大な富を得ました。しかし現在では、多産する蛍石から製造されるフッ素を用いた人工氷晶石がアルミ精錬に使われ、また埋蔵量が底を突いたため1987年にイヒドゥートは閉山し、町はゴーストタウンと化しまっています。


・氷晶石系(Cryolite Series)の鉱物
 Elpasolite エルパソ石 K2Na[AlF6]
  Simmonsite シモンズ石 Na2Li[AlF6]



◆ガガーリン石について
この鉱物は1961年にカザフスタンで発見されたハロゲン化鉱物で、ソビエトロシアで初めての宇宙飛行士で「地球は青かった」の名言が有名なYuri Gagarin(1934-1968)にちなんで名づけられた鉱物です。
新鉱物の命名権は発見者に与えられますが、自分の名前をつけてはいけないというルールがあるので、この鉱物もガガーリン本人が発見したわけではなく、彼の功績をたたえて名づけられただけです。1961年はガガーリンが宇宙に行ったまさにその年だったので、ソビエトの鉱物学者たちもお祭り気分だったのでしょう(笑)


ガガーリン石の色は、茶色、クリーム色、薄黄色、薄ピンク色などで、晶洞では自形結晶になることもあるようです。結晶系は六方晶系なので六角柱状の結晶です。
こちらのサイトにその画像があります↓
mindat.org http://www.mindat.org/min-1629.html

イットリウムという希土類元素を含む鉱物なので、弱いですが磁性があります。強力マグネットに30cmぐらいのヒモをつけて標本近くでプラプラさせるとガガーリン石が磁石を引き寄せるのが分かります。
また、自分の家で試したところ短波紫外線で黄色に蛍光しました。クリーム色の部分もピンク色の部分も関係なく蛍光しました。
水に溶けそうな雰囲気もありますが、溶けないのでご安心ください。

・ガガーリン石群(Gagarinite group)の鉱物
Zajacite-(Ce)   ザジャク石 Na(Ce,La,Nd,Ca)2F6
Polezhaevaite-(Ce)   ※   NaSrCeF6

※2009年発見の鉱物ですので、日本語名がまだわかりませんでした。。。


◆産出について
さて、標本の画像紹介でも見ましたが、氷晶石に黒雲母、方鉛鉱、さらに希土類鉱物のガガーリン石といった少し不思議な組み合わせですね。これは閃長岩ペグマタイト、あるいは閃長岩に伴う高温熱水鉱脈(気成鉱脈)に産するためにこのような日本では見慣れない組み合わせになると考えられます。閃長岩が大規模に出るのは大陸の古い地質の広がる地域で、日本のような新しい地質でできた地域ではほとんど見られません。グリーンランドの氷晶石もこの標本の産地ロシアでもその他の産地でも、氷晶石が出るのはほとんどすべて閃長岩による鉱床のもののようです。
氷晶石ができるには弗素が必要なのは化学組成を見れば明らかですが、詳しい生成機構は明らかになっていないようです。

またしてもmindat.orgですが、http://www.mindat.org/min-1161.htmlに原産地グリーンランドで氷晶石と共生する鉱物の一覧が載っていました。この標本の産地も産状は似たようなものだから、同じような鉱物が出ると思われます。

方鉛鉱Galena、
硫砒鉄鉱Arsenopyrite
黄鉄鉱Pyrite、
輝水鉛鉱Molybdenite、
菱鉄鉱Siderite、
鉄マンガン重石Wolframite、
コルンブ石Columbite
錫石Cassiterite、
石英Quartz、 
微斜長石Microcline、
雲母群Mica Group、
ジルコンZircon、
黄玉Topaz、
蛍石Fluorite、
クリオリチオナイトCryolithionite、
ウェーバー石Weberite、
チオライトChiolite、
ジャーライトJarlite、
ゲアルクスト石Gearksutite、
プロソパイトProsopite、
パクノライトPachnolite
ソムセノライトThomsenolite、



見慣れたペグマタイト鉱物、高温熱水鉱床鉱物に加えて、見慣れないハロゲン化鉱物が混ざっていますね。蛍石以降の鉱物はすべてハロゲン化鉱物で、特にフッ素との化合物です。





~おまけ~
Wikipediaのガガーリンの記事に面白い話が載ってたのでついでに紹介。。。
「地球が青かった」の次に有名な言葉、「神はいなかった」についてです。


~引用開始~
ガガーリンの地球周回中の言葉として報道され、有名になったものとして「ここに神は見当たらない」というものがある。他に 「私はまわりを見渡したが、神は見当たらなかった」という表現でもよく引き合いに出されている。
ガガーリンの親友であった宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフは著書"Two sides of the moon"(『アポロとソユーズ』、p295)の中でガガーリン自身が好んで語ったアネクドートとして次の話をあげている。
おそらく、この中の言葉が彼自身の言葉として一人歩きしているのではないかと思われる。

宇宙から帰還したガガーリンの歓迎パーティに、ロシア正教のモスクワ総主教アレクシー1世が列席しており、ガガーリンに尋ねた。

総主教  「宇宙を飛んでいたとき、神の姿を見ただろうか。」
ガガーリン「見えませんでした。」
総主教  「わが息子よ、神の姿が見えなかったことは自分の胸だけに収めておくように。」

しばらくしてフルシチョフがガガーリンに同じことを尋ねた。総主教との約束を思い出したガガーリンはさきほどとは違うことを答えた。

ガガーリン 「見えました。」
フルシチョフ「同志よ、神の姿が見えたことは誰にもいわないように。」(レーニン主義は宗教を否定している)


~引用終わり~


なかなか面白いですね、こういうジョーク、ロシアではアネクドートといいますが、ともかく好きです♪
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沢田 輝
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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