- 2010-10-17
コロナド鉱 Coronadite
コロナド鉱について
まずは、Taouz,Moroccoのコロナド鉱の画像から

↑球状集合になったコロナド鉱

↑球の断面には層状に積み重なった様子が見て取れる

↑上の標本の裏側 粉状の赤鉄鉱などからなる 触ると赤茶色の粉が手に着いてしまう
コロナド鉱はPb(Mn2+,Mn4+)8O16の組成を持ち、クリプトメレーングループの鉱物です。単斜晶系、硬度4.5~5。
1903年発見の鉱物で、名称はFrancisco Vasquez de Coronadoというスペインのアメリカ南西部の探検者に由来するという記述と、原産地のアリゾナにあるコロナド鉱山に由来するという記述の2通りがありました。「コロナド鉱山」の名称の由来が「コロナド」という人物に由来し、そこで産出した新鉱物がコロナド鉱と名付けられた、ということなのでしょうかね?まぁ、名称の問題は本記事の主題とは外れるのでこのくらいにしときます。
コロナド鉱は日本では北海道上ノ国町にある上国鉱山で産出が確認されています。
コロナド鉱が属するクリプトメレーングループには以下のような鉱物があります。ちなみに、クリプトメレーンは「クリプトメレン」「クリプトメレン鉱」等の複数の和名表記がありますがどれでも問題ないでしょう。
・クリプトメレーン(cryptomelane) K(Mn4+,Mn2+)8O16
・アンカン石(ankangite) Ba(Ti,V3+,Cr3+)8O16
・ホランド鉱(hollandite) Ba(Mn4+,Mn2+)8O16
・万次郎鉱(manjiroite) (Na,K)(Mn4+,Mn2+)8O16・nH2O
・マンナード鉱(mannardite) Ba(Ti,V3+,Cr)O16
・プリデル石(priderite) (K,Ba)(Ti,Fe3+)8O16
・レッドレッジ鉱(redledgeite) BaTi6Cr(+2)3O16・H2O
・ストロンチオメレン(strontiomelane) SrMn(+6)4Mn(+2)3O16
・轟石(todorokite) (Mn,Ca,Mg)Mn4O7・H2O
いずれも二酸化マンガンのような黒っぽい鉱物で格段に美しいと言えるようなものではありませんが、球状の集合などの造形美で楽しめるものが出ることはあります。ただ、肉眼鑑定では球状集合などの特異な形になっていない限り、二酸化マンガン鉱物と区別するのは難しいものが多いです。
ところで、Taouz,Moroccoというと化石の標本が数多く産しますし、鉱物標本では赤鉄鉱Hematiteの腎臓状集合が有名なところです。

↑腎臓状とは良く名づけたものだ、と思う。テカテカと黒光りする様子は標本棚の中でも独特の存在感がある。

↑上の標本の裏側 こちらもコロナド鉱同様、断面には層状に積み重なった様子が見える。
ネットでTaouz,Moroccoで検索するとかなり広大な砂漠地帯の地図が出てくることから、このコロナド鉱と赤鉄鉱が近苦で採れたものだという可能性は低いでしょう。しかし、同じように球状集合しているということは何か関係がありそうです。
このコロナド鉱はK標本店で購入したもので、ラベルにはK先生の短い解説文が付いています。それによると、「二次鉱物と言うよりも初生的に鉛(Ⅱ)イオンやマンガン(Ⅳ)イオンを含む化合物を輸送する溶液から空隙中で沈殿したものと考えられ、その形態の形成には明らかに重力の影響がある。年輪様の構造の発達には成分変化に由来する」とあります。
おそらく、今回紹介したコロナド鉱も赤鉄鉱も、比較的低温の熱水からゆっくりと沈殿するようにして晶出したのでしょう。高温の熱水なら菱マンガン鉱などのもっと還元的な鉱物になると思われます。松原先生の『フィールドベスト図鑑 日本の鉱物』によれば、コロナド鉱の属するクリプトメレーングループの鉱物も同じように球状集合を示したり(クリプトメレーン)、海底の熱水活動で層状に沈殿していたり(轟石)、という事が確認されています。
それにしても、こんなに滑らかに、赤鉄鉱では金属光沢を帯びるまでに、ツルツルとした球状集合になるのも不思議なものですね。Taouzのコロナド鉱標本は、お金を出せば球がにょきにょきと連鎖的にいくつも連なっている面白い形の標本もあります。まぁ、形がいくら良くても色が色ですから「美しい」とは言い難いのでそこまでお金を出す気にはならず、コロナド鉱の標本はこの程度のものにしておきました(笑)
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