planetscope blog

  • 2010-12-04

尾太鉱山の菱マンガン鉱Rhodochrosite 


  菱マンガン鉱@尾太鉱山1


熱水鉱床で銅や金を産した鉱山、青森県尾太鉱山の菱マンガン鉱です。標本の幅は約9cm。母岩は主に石英で、そのほか黄鉄鉱や閃亜鉛鉱を伴っています。
尾太の菱マンガン鉱は有名な古い標本で、これはK標本店で購入しました。
この標本は自形結晶ではありません。上の写真の左上あたりをよく見ると、菱マンガン鉱の中が空洞になっているのがわかります。また、右下には三角形の「穴」のようなものがあります。
下の写真は三角形の「穴」の部分のアップです。この菱マンガン鉱が自形結晶ではなく、何か他の鉱物の三角形の面を持つ結晶表面に細かい結晶として成長し、そして内側にあったもとの鉱物が溶け出してしまった、いわゆる「ヌケガラ」なのです!
菱マンガン鉱@尾太鉱山2


また、最初の写真の右のほうには下の写真に示すように、もとの鉱物が双晶になっていたことを表すような部分があります。三角形の結晶2つが組み合わさって六芒星の断面が実現されたのでしょう。
菱マンガン鉱@尾太鉱山3


では、菱マンガン鉱の抜け殻になる前の、元の鉱物はなんだったのでしょうか?


三角形の結晶面をもち、菱マンガン鉱よりも先に晶出すること、断面が六芒星のようになるような双晶になるなどのことから、おそらく黄銅鉱が元の鉱物だったと考えています。


しかし、黄銅鉱が菱マンガン鉱よりも先に晶出するのは、黄銅鉱のほうが熱水に対する溶解度が小さく晶出温度が高いからです。それなのに、晶出した後に菱マンガン鉱ができるような温度の下がった熱水に再び溶けるというようなことが本当に起こるのでしょうか?


私はこれを説明するために以下のように考えてみました。


1.普通の熱水鉱床のように黄銅鉱や母岩の石英、そのほか黄鉄鉱などが晶出した。この石はそのような熱水鉱床の中のごくありふれた晶洞の石であった。


2.そののちに、塩素分や炭酸分に飛んだ酸性のマンガン熱水が侵入してきた。
  すると、


   CuFeS2+MnCl2(aq.)+CO2 
      →MnCO3+[CuCl4]2- +FeCl2+H2S


  のような反応が起こる。係数はテキトーですがそこは今はおいておくことにします。
  MnCl2と書いてみましたが、これはMn2+イオンとCl-イオンを含む熱水ということで捉えてください。


3.なぜこんな反応が起こると思ったかというと、塩素で黄銅鉱を精錬する湿式製錬というものの
  研究開発が進んでいるらしいという話を聞き、
  [CuCl4]2-(テトラクロロ銅(Ⅱ)イオン)という錯イオンは低温でも結構安定らしい、
  と自分勝手に解釈してみた結果です……

 
4.さらに火山活動が収まって温度が下がってくれば熱水が徐々に酸性溶液になり、
  しかも酸性なら高校化学よろしくな平衡反応


    2[H+]+[S2-]→[H2S]


  によって、H2Sが出来る方向に反応が進みやすくなるはずだと考えられる。


なにか格段の根拠があるわけではない、妄想のようなものですが(笑)、このように解釈してみるとこの標本の成因をなんとか説明できそうです。


もちろん、元の鉱物が黄銅鉱と決定したわけではありませんし、仮に黄銅鉱だとしても上記のような機構で菱マンガン鉱の抜け殻になったとは限りません。尾太鉱山のものでなくても、このようなヌケガラの標本をお持ちの方や、その成因についてご意見ある方等がいましたら連絡お待ちしております(^皿^)/



いずれにしても、この標本は「歴史ある国産標本」という範囲に留まらない大変興味深い標本です!

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Author:てるてる
沢田 輝
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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