planetscope blog

  • 2011-02-28

2-1 千葉石と結晶構造


  本館planetscopeで千葉石の特集ページ作りました!

http://teruteru.bakufu.org/Chibaseki.html


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◆千葉石Chibaiteの基本情報 
すでにMindat.orgに千葉石のページが作られていました。
http://www.mindat.org/min-39335.html

・原産地Type Locality
  千葉県南房総市荒川
  Arakawa, Minamiboso city, Chiba prefecture, Kanto region, Honshu Island, Japan

・化学組成 - SiO2・n(CH4,C2H6,C3H8,C4H10) (n = 3/17 (max))

・結晶系 - 等軸晶系

・結晶の外見 - 
 千葉石結晶の理想型
↑画像3 結晶の理想型(左b)と一般に観察される形態(右c)の模式図
cはbの点線で囲まれた部分の双晶になっており、六角板状に見える。
(高田雅介氏作成)、日本地質学会のサイトより引用


◆クラスレート(包接化合物)
千葉石の化学的な特徴はなんといっても、シリカの中にメタンなどの有機物分子を含んでいることです。シリカによる結晶の中にメタン、エタン、プロパン、ブタンが取り込まれていて、その構造は新しい資源の可能性が注目されるメタンハイドレートと同じ構造で、メタンハイドレートの水分子を珪素と酸素で置き換えたような構造になっています。
千葉石の結晶構造
↑画像4 千葉石の結晶構造とメタンハイドレートの比較 産総研のサイトより


千葉石やメタンハイドレートのように、一方のある化学種(ホスト)によって作られる分子レベルの空間の中に、その空間に形状と寸法が適合することを第一要件として、他方の化学種(ゲスト)を取り込む(包接する)ことによって生じる化合物のことを包接化合物といいます。包接化合物は抱接体、Clathrate(クラスレート)、Inclusion compound(インクリュージョン コンパウンド)などとも呼ばれます。

http://maildbs.c.u-tokyo.ac.jp/~nisikori/clathrate.html
クラスレート(包接化合物)
↑画像5 包接化合物 
 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 錦織研究室のサイトより

錦織研究室のサイトによると、
・ホストとゲストの間には、通常の化学結合(共有結合)はありません。しかし、水素結合や静電相互作用などは存在する場合があります。…
・ホストには、ゲストが入っていなくてもホスト単独で包接体ホストとしての構造を保っているものと、ゲストと共存して初めて包接体ホストとなるものがあります。 包接体の形成は、ホストとゲストが共存すると自発的に進みます。普通は、ホストとゲストを直接接触させたり、溶液中で混ぜたり再結晶したりすることで行い、一般の化学合成で用いられるような激しい条件は不要です。また、多くの場合、包接体を分解すると中身のゲストを回収することができます。

とあります。下の画像も錦織研究室から。
包接化合物2
↑画像5 錦織研究室のページから引用。

メタンハイドレートの場合、メタンが抜けると水分子によるホストの構造は崩壊してしまいます。千葉石の場合も、白濁した石英に変化してしまい千葉石の仮像になったものがいくつも見つかっているところを見ると、ゲストの有機物が抜けてしまうと構造を維持できないのかもしれません。もちろん、メタンなどの分子が抜けてしまってもしばらくシリカによるホスト構造は維持できるが「長時間」かけてより安定な石英に変化していく、という可能性もありますが。
また、条件さえ合えばホストとゲストによる抱接体形成の反応は自発的に進むと、いうのも気になるところです。地表環境では千葉石の多くはより安定な石英に崩壊してしまい、千葉石はレアな鉱物になるのかもしれませんが、千葉石の生成環境した環境とされる海底の付加体(『3-1千葉石の産地と生成環境』で詳しく書きます)ではメタンなどとシリカがあれば用意に千葉石が形成されるということなのでしょうか?海底にはたくさんの千葉石が眠っているのかもしれません!そのうち、海底調査で千葉石の巨晶なんてのが見つかったり…なんて妄想してしまいます(笑)

◆千葉石の結晶構造
画像4の下半分を見ると、Ⅰ型、Ⅱ型、H型という結晶構造の図があります。これは抱接体のホストの形が3通りあるということを表しています。

水がホスト、メタンがゲストとなっている包接化合物:メタンハイドレートの場合、Ⅰ型の構造を取ります。メタンハイドレートは海底で産出しますが、そこには水がゲストとしてメタン以外のエタンやプロパンなどのガス分子を取り込んでいる包接化合物もあり、それらは総称して天然ガスハイドレートと呼ばれています。天然ガスハイドレートでは、すでに天然のものの中からこの3通り全てが発見されていました。この構造の違いは、ゲストになる有機物の分子の大きさの違いから現れるものです。ゲストの「隙間」の直径は1 nm程度で、大きなガス分子は大きな「隙間」にしか入ることができないため、このようなことが起こるのです。

シリカがホスト、メタンなどの有機物がゲストになっている鉱物では、Ⅰ型のメタンハイドレートと同じ型のものが、以外にも古く、19世紀にメラノフロジャイト(Melanophlogite、黒珪石)として発見、記載されていました。(詳しくはこのあと2-2千葉石とシリカ鉱物にて)
今回発見された千葉石はⅡ型の構造を取るものです。
さらに、千葉石を含む標本から、すでにH型の結晶構造を取る鉱物が発見されているといいます。すなわち、近々「第2の千葉石」が発表されるということになるでしょう!れらの発見により、天然ガスハイドレートと同様、シリカ鉱物でも、3種類の構造が自然界に存在することを世界で初めて確認されたことになります!

石なし県・千葉で一気に2種類も新鉱物が発見されるとは!しかも、包接化合物という珍しい鉱物が!

「第2の千葉石」の名前は何になるのでしょうかね?無難に「房総石Bousouite」あたりなのかな?


~参考~
・Mindat.org 千葉石の記事

・産業総合研究所 プレスリリース『天然ガスを含む新鉱物『千葉石』-天然ガスハイドレートと相似な構造を有するシリカクラスレート鉱物-』
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110216/pr20110216.html

・日本地質学会『新鉱物「千葉石」の発見』、高橋直樹(千葉県立中央博物館)
http://www.geosociety.jp/faq/content0281.html

・東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の相関基礎科学系錦織研究室のサイト

・Wikipediaより『メタンハイドレート』の記事



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まだ千葉石特集は続きます!

続きはこちら↓へどうぞ!
http://teruteru.bakufu.org/Chibaseki.html






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沢田 輝
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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