- 2011-04-01
高根山鉱山のランシー鉱 Rancieite
2011年3月3日訪問
高根山鉱山は伊豆半島の静岡県下田市にあり、湯ヶ島層群に分類される新第三紀中新世前-中期(22Ma~15Ma)の安山岩及び安山岩質凝灰岩に胚胎される中低温熱水鉱床で、入り組んだ石英脈中にMn,Cu,Fe,Zn,Ag,Auなどの金属元素を含む。採掘対象としては金銀がメインだったが、昭和30年にはすでに閉山していたらしい。
鉱物採集のフィールドとしては、ここではランシー鉱Rancieiteが有名である。(Ca,Mn2+)Mn4+4O9・3H2Oという組成を持つマンガンの鉱物で、新鮮なときは独特の銀赤色と強い金属光沢を持つ。しかし、空気中では徐々に酸化して光沢を失って黒変し、轟石Todorokiteやハーネス鉱Birnessiteなどの二酸化マンガン鉱物になる。

↑高根山鉱山の様子。沢の両岸にある石英質のズリ石を割って探す。
ここの石英の中には、「いかにも熱水鉱床」といった雰囲気の水晶が多産します。
径1cmにもなるような大きさのものが集まっている群晶なども幾つか見られた。
水晶の産地としてもいいくらいだと思う(笑)
ランシー鉱は「ヌケガラ石英」と呼ばれるガサガサとした石英に黒い粉状の二酸化マンガンが
付いているものを割るとみつかりやすい。
ヌケガラ石英は熱水鉱床において、方解石や菱マンガン鉱などの炭酸塩、あるいは重晶石などの硫酸塩が
晶出した後に、再度温度の高いシリカに富む熱水が嵌入してきたときに炭酸塩、硫酸塩を溶かしつつ、
石英が晶出することでできると考えられる。

↑上の写真を撮った場所から振り返って撮影。住宅地からすぐ近くの産地で、電車で行くのには便利。
クルマの場合は駐車場所に注意が必要。

↑沢の西側斜面には坑道もある。中は泥水が溜まっていて石は全く採れない。写ってるのは同行者のarikouさん

↑ランシー鉱Rancieiteの付いた石英。標本の幅は5cm程度。
左側の細かい水晶の出ている晶洞部分に光沢の強い箔状の鉱物がついており、それが本鉱である。
石英の母岩を割った衝撃や持ち帰る間のリュックの中での衝撃で
ランシー鉱が剥がれ落ちてしまうことがよくあるので、注意が必要。

↑ランシー鉱部分のアップ よくみると樹枝状の結晶集合になっていることがわかる。
このような結晶集合になっていることが肉眼で明らかに見えるものは少ないが、
石英の隙間に塊状になって出ているものは目が慣れてくれば割とよく見つかる。

↑ランシー鉱 さらにアップ。独特の銀赤色が魅力的な鉱物である。
酸化して光沢を失って黒変しまうので、遮光して保存するべきである。

↑高根山鉱山は水晶も多い。いかにも熱水鉱床、といった感じの水晶がたくさん採れた。
画像幅約15cm

↑石英塊の中の幅4cmほどの晶洞に水晶が群生している標本

↑上の標本の裏側。ここの石英塊は「円柱状の炭酸塩の跡のようなヌケガラ」が多く見られる。また、その円柱を中心として放射状に石英の結晶が成長していることが見て取れるものも多い。
すなわち、1回の熱水活動により石英などが晶出した後やや温度が下がってから方解石や菱マンガン鉱などの炭酸塩鉱物、あるいは重晶石のような硫酸塩鉱物が晶出、そののちに別の熱水活動で高温のシリカにとんど物がやってきて、炭酸塩を溶かしながら同時にそのまわりに石英を晶出させたのだと考えられる。もっと炭酸塩などに富んでいた部分はランシー鉱が入っているような空孔の多いガサガサした石英となったのだろう。
このように、本産地の水晶・石英塊は複数回の熱水活動が断続的にあったことを伺わせるものである。ランシー鉱がガサガサ石英に多いということは、はじめの方の熱水活動でMnやCaの炭酸塩鉱物(方解石、菱マンガン鉱)に飛んだ部分が、次の熱水活動により炭酸塩が溶けて取り除かれ、酸化鉱物であるランシー鉱になったのかもしれない。
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