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  • 2016-11-11

地球と太陽系のMg/Si比問題


  地球全体の組成の推定は、
・分光計による太陽大気のフラウンホーファー線観察から太陽組成の推定
・隕石の組成から小惑星帯の組成推定
という2つの実験事実から得られるデータがおおよそ一致していることを用いて推定している。
しかし、この推定方法から得られたBulk Silicate Earth (全地球珪酸塩)の組成(=MgSiO3)は、上部マントルの主要な岩石であるかんらん岩(=Mg2SiO4)とMg/Si比が一致しない。
地球とコンドライト隕石、太陽系全体の化学組成の違い
Ringwood(1966;1975)では、この問題をSiがSiO2から還元されてコアの鉄ニッケル合金に溶け込んだとして解決させようとした。彼は最も未分化な隕石で太陽大気に近い組成を持つCIコンドライトを出発物質として、Mg*=Mg/(Mg+Fe)やマントルのMg/Si比などが現在のマントルに合うように各成分を単純なモデル計算をして得られた組成の岩石をパイロライトPyroliteと呼んだ。当時の彼のモデルでは、このパイロライトが最も始原的なマントル物質としてマグマオーシャン以降ずっと残っているとしたが、現在ではMORBの微量元素の研究など様々なデータから上部マントルは始原的な状態ではない、MORBの進化により液相濃集元素などに枯渇した物質とされている。Ringwoodの後、MORB組成から分化の影響などを考慮して最も始原的なマントル物質としてパイロライトがどのような組成を持った岩石であるのかを推定する試みは続けられた。


Ringwoodは後にこの「パイロライトモデル」を修正する。というのは、SiO2がSiに還元されなければコアに溶けこむことができないが、それほどの強い還元作用があったとするなら、現在のマントルにFeOやNiOが残っていることと矛盾するからである。そこで彼は原始太陽系星雲の中で部分蒸発作用が起こり、Siが揮発してしまったとする説に乗り換えている(Ringwood,1979)。 今後、惑星形成論の中でこういったことをモデル評価される必要があるだろう。(太陽系全体の組成分帯を決定する)


 一方で、マントルは2層の異なる物質からなるとする説もある。すなわち、かんらん岩組成なのは上部マントルのみで、下部マントルはCIコンドライトや太陽大気と同様にMgSiO3の組成を持った岩石からなるとするものである。マグマオーシャンの中で上部マントルと下部マントルの分化が起き、MgSiO3成分(メージャライトガーネット相、ペロフスカイト相)が選択的に晶出して沈降したとするモデルである。高圧実験で得られた物質から地震波速度を求めると、観測データから作られたマントル速度構造の最も単純なモデルであるPREM (Preliminary Reference Earth Model)に一致するという結果も発表されている。


しかし、このような大規模な分化が起きたのならば微量成分などの組成比(Sm/Yb 、Sc/Sm、Ca/Al、Al/Ti)が上部マントルとCIコンドライトで大きくズレることが分配係数から予想されるが、実際にはマントルとCIコンドライトは近い値を示すものが数多くあり上下の大規模な分化に否定的である。また、地震波トモグラフィーの結果を見るに、地球史後半では全マントル1層対流が起こっていると考えられている中で、2層成分構造が長期に渡って維持できるかも疑問である。

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沢田 輝
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東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
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