planetscope blog

  • 2012-01-20

「タウリン1000mg配合」は「1g」ではない!


  栄養ドリンクの代表格として有名な、リポビタンD
CMの「タウリン1000mg配合」のフレーズは誰しもが知っていますね。

あのCMを見て、ちょっとものしりな人は、

「1000mgって、1gじゃん。広告宣伝のため、多く見せかけるように1gを1000mgなんて表現してるだけでしょ。
 だいたい、タウリンなんてそう珍しい成分でもないのに、そんな小賢しい宣伝をするなんて!」

なんて言っていたりする光景、よくありますよね。
しかし、真の理系なら、あのCMの意味はこう考えるはずです。

「1000mg配合と1g配合では同じ意味ではない。誤差範囲が異なるのだ。
 1g配合だと、有効数字が1ケタしか無く、誤差範囲は四捨五入で考えると0.5g以上1.5g未満となり、1gも幅がある。
 しかし、1000mg配合と表記すると、有効数字の精度は4ケタもあり、誤差範囲は999.5mg以上1000.5mg未満となる。
 リポビタンDはタウリンというありふれた成分ですら誤差範囲を1mg未満に抑えるほど精密に製造されているのだ!」


という風に考えて、リポビタンDが実に素晴らしく精密な栄養ドリンクであると判断します。


1mgというのは、実際にはとても小さな量です。
1滴ポタっと垂れただけでも1mgなんてあっという間にずれてしまいます。
……さて、リポビタンDが実際にタウリンの誤差範囲が1mg以下なのか、私は知りません(笑)
誰か調べてみてねw(^皿^)
  • 2011-11-16

迷走の果てに見えてきたもの-量子力学との付き合い方


  理系大学生というのは、入学すぐに化学の授業のはじめのはじめで習う「量子力学」によって学業への意欲を玉砕されるものである。大学という新しい環境に右も左もわからない、講義は教授は淡々と話すのみで眠くなる、そんな中、物理数学の前提も無しに、高校数学の微積分となけなしの高校物理の情報による類推のみで、ボーアの水素原子モデルだやらシュレディンガー方程式Hψ=Eψやらにぶち当たらされるのであるから、脱落するのも無理は無い。私も学部1年1学期の化学の成績は赤点すれすれだった一人である。
そして2年生も半分以上過ぎているが、未だに量子力学との関係は良好ではない。しかし、それなりに見晴らしは良くなってきたので、現時点での自分の位置を確認する上で、量子力学をどう勉強していくかを振り返ろうと思う。この文章は、主に化学や材料科学で量子力学を使う方への参考になればと思う。物理学科の高度な量子力学は、それはモット頭の良い人に聞いてください。この記事は、そんなに頭の良くない人のそんなに頭の良くない人のための文章で、以下に書いてあることは、科学的事実の解説よりも、如何にして初心者に不親切極まりない高度な大学の講義についていくかということが中心となる。


1. 現代の量子力学は「光の粒子性」と「電子の波動性」という2つの実験事実からシュレディンガー波動方程式を導く、というのが基本となっている。波動の式の取扱は高校物理+αでとりあえずはなんとかなる、と思う。それ以上の厳密な扱いは物理数学や解析力学を習った後でないと難しい。1年の初っ端のころは天下りで計算を少しゴリゴリと練習しておき、後々中身がわかってくるというので良いかと思う。


2. 前期量子論(ボーアの水素原子やら原子スペクトルのライマン系列やら黒体放射の式がどうやら)といった事柄は量子力学の発見の歴史の中では重要な役割はあったが、現代の量子力学の体系を組み立てるにあたっては必要な前提ではない。 だいたいの教科書は歴史的経緯を重視するあまり、この話の本筋と関係ない部分でやたらと複雑な珪酸をやらされて、「ここが出来なきゃ化学は先に進めない」という気分にさせられるから困るのである。
 この点をバッサリと割りきってわかりやすく書いてくれたのが、2年前期で履修した現代物理学序論第一の講義ノートで、このテキストはPDF形式で東京工業大学のサイトで一般にも公開されているのでぜひ参考にしていただきたい。


3. シュレディンガー方程式を導いたら、それの取扱いを練習するのが箱型ポテンシャルやらトンネル効果やらなどである。また、演算子やベクトル解析などの物理数学の話も必要になるだろう。大学で鈍りがちな計算力を呼び覚ますのは良いことだが、正直なところ、化学には余り必要ではない。量子力学の世界観の教養程度にやっておこう。2年生くらいで物理数学の知識が追いついた頃にゴリゴリやってみるのが一番力になるかもしれない。


4. さて、ようやく原子核と電子の系という実用的な系の量子力学を考えよう。しかし、重大なことだが、物理の系において、三体問題は解析的に厳密に解くことはできないのである。要するに、厳密に数学的に解けるのは原子核1つと電子1つという水素型原子の二体問題のみである。これ以上の原子核や電子が登場する原子分子に関する波動方程式は近似を使って解くことになる。


5. ところで、1s、2sとか3dとか4pの軌道に電子をパウリの排他原理・フントの規則に従って↑↓と書き入れていくあの作業は何なのだろうか?
 1sや2sといった電子の軌道は原子核が+Zeで、その周りを-eの電子が1つだけ回っているという量子力学の二体問題を解くことで得られる関数である。それを実際に存在するほとんどの原子やイオンなどに当てはめるには、沢山の電子が存在するから、それら電子同士の相互作用の影響を何らかの近似で評価してやらなければならない。ここでもっともザックリとした初歩的近似がオービタル近似というもので、これは簡単にいえば、電子間相互作用を無視してしまい、エネルギーの低い軌道から電子を↑↓と詰めれば良い、と近似してしまうのである。ザックリしすぎているので、より精巧な近似もちゃんとあるが、とりあえずの元素の性質はこの近似によってかなり理解することが出来るので、有用な近似ということができる。
 このへんからは近似しまくりなので、どんどん物理の色が薄まっていく\(^0^)/ 好き嫌いの別れるところであろう。まぁ、結局は実験事実と辻褄があっていて、化学反応についてある程度の予測能力があるモデルを探していく作業になるのだ。


6. 原子の波動関数だけでなく、分子の波動関数を考えるとなったときに使う近似が原子価結合法(VB法)と分子軌道法(MO法)という2つがある。
 計算のしやすさという都合上、現在の化学の主流はMO法による近似であるが、VB法は伝統的な化学結合の考え方を反映しているので、有機化学などにおいて分子のおおまかな形を捉える上で使われる。(sp3混成軌道とかもVB法) 現実には複雑な分子の波動関数など、手計算では解けないのでコンピューターに任せることになるが、その時に都合が良いのがMO法である。最も初歩的には、LCAO法などの近似を用いて結合性軌道と反結合性軌道が波動方程式の解として出てきて…などの作業をすることになる。この計算過程に用いるのが変分原理であったりする。


とまぁ、今まで習ってきたことを振り返ってみると、こんな感じである。こうやって書いてみると自分の思考が整理された気がする。
この先にモット高等な近似方法があるのだろう。それは今後量子化学の授業で習い次第書き足すだろうが、もうここまで線路を敷けば、あとは私がとやかく言わなくても賢明な皆様は自力でどうにかなるでしょう!
こうやって世界観を振り返るのもたまには必要だが、真の力に必要なのは、なにしろ、自分の手でゴリゴリ計算してみることだ、と感じる今日この頃である。

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Author:てるてる
沢田 輝
(@Hikaru_Sawada @IWKRterter)
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(館長のブログ)

東京大学広域科学専攻D2(駒場キャンパス)
博士課程より、東京工業大学地球惑星科学専攻から移籍しました。
地球惑星科学のなかでも、大陸地殻の成長と進化などといったテーマの地質学・地球化学あたりの研究をしてます。

中学から鉱物コレクションをはじめて早くも15年くらい、鉱物学から地球科学全体へ興味が広がっていって今こうなってしまったという感じの院生です。
石の話や、大学の話、学問とか関係ない雑記も適当に書いていきます。

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